スパダリ外交官からの攫われ婚
「そう言えば、あんたの服を用意しておくのを忘れていたな。とりあえず俺の服を着ておくといい」
寝室から出てきた加瀬はいくつかの服を手に持っていて、それを琴に渡してくれた。クールな加瀬に似合いそうな黒や白のシャツとハーフパンツ。
さすがに下着までは無かったようだが、これだけでも十分助かると琴はホッとする。
ただ問題は背の高い彼の服を小柄な琴が着れるかどうかなのだが……
「えっと、じゃあ私はもう一度あっちに行って着替えてきますね」
「何言ってんだ、足を痛めているんだからここで着替えればいい。俺が部屋から出ていく」
そう言い残してさっさとリビングから出て行ってしまう加瀬。
彼のぶっきらぼうな態度と似合わない優しさに戸惑いながらも、琴はそんな加瀬に少しずつ惹かれていくのを感じていた。
「……でも、やっぱり服はダボダボよね」
白のシャツを着たのは良かったが、思ったよりも大きくて肩までずり落ちそうになる。ハーフパンツは腰の位置で何度も折り曲げる必要があった。
琴が小柄なのもあるが、加瀬は見た目よりもしっかりとした体型なのだろう。渡されたどれを着ても同じような状態だった。