Don't let me go, Prince!
エピローグ



「渚、急いで……ではなくて、渚は急がないで身体を第一に……そう、ゆっくりで。」

「そんな大袈裟に心配しなくても、まだ妊娠しているかどうかも分からないのよ?弥生さんってそんなに心配症だった?」

 そう、私は最近体調がおかしくて。もしかしておめでたかもしれないと先程妊娠検査薬を買って来たばかりなのだけれど。
 妊娠しているかもしれないと分かってからの弥生さんはとても過保護で、これは駄目あれも駄目で少し困っちゃうわよ。

「可能性がある以上気を付けるに越したことはありません。渚はお母さんになるかもしれないんですから。」

 もし本当に赤ちゃんがお腹の中にいるとしたら、あのやり直しの新婚旅行の時の子になる。

「分かったから、ちょっと検査してくるわね。」

 そう言って弥生さんを置いてお手洗いへ。説明書の指示に従ってからしばらく待つ。

「出た!」

 ハッキリと窓枠の中に出た2本の線に飛び上がりそうな気持ちになる。急いで弥生さんに結果を伝えると、ギュッと抱きしめられた。

「ありがとうございます、渚。本当にハネムーンベビーですね。」

「まだよ、弥生さん。ちゃんと産婦人科に行ってみてもらわなきゃいけないんだから。」

「それでしたら知り合いに腕のいい産婦人科医がいます。近々お世話になるかもしれないと伝えていますし、女性の医師ですから渚も安心でしょう。さあ、行きますよ?」

「ちょっと、弥生さん?」

 弥生さんに強引に車に乗せられて、彼の知り合いの医師の診察を受けた。


 内診で見えたのはまだ小さな丸のような形だけれど、この子がどんどん大きくなっていくのよね?
 弥生さんは画面に目が釘付けで……

「再来週くらいには心音が確認できると思いますよ。また二週間後に来てください。」

 エコーの写真を貰うと、弥生さんはそれを大切そうにパスケースに入れていた。あーあ、今からこんな調子では産まれたらきっと溺愛間違いなしね。

「弥生さん、これからは子供も私も愛してね?」

「もちろんです。渚の事も貴女のお腹にいる二人の子も、誰よりも深く愛します。」

 本当に良かった、貴方に出会えて。貴方と再会出来て……こうして二人で前を見る今がある。
 そしてこれからはこの子も一緒に……

「私も愛しているわ。」


      ~END~

   2020/09/29    花吹




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