フォンダンショコラな恋人
「えーと、執行猶予とかいうの……」
「付くわけないだろう。刑は即時執行だよ」
「即時……?」
「そう、このまま君を閉じ込める。今日は帰さない」

甘い瞳に絡めとられて、翠咲は胸を掴まれた。いつも淡々とした顔しているクセに、こんな時ばっかりそんな甘い表情……、ズルいよ。

けれど、いつでも倉橋は真っ直ぐだった。
外は苦くても、中がこんなに熱くて甘い人なんて、きっと誰も知らない。

──やっぱりフォンダンショコラじゃない……。
そう思うと、翠咲の口元はつい微笑んでしまう。翠咲は柔らかく倉橋にもたれた。

「お手柔らかに、お願いします」

その時、ドン!と身体に響くような音がした。

「あ……花火……」
倉橋は苦笑した。
「花火の間だけ、執行猶予してあげるよ。僕も君と見れたらいいって思ったんだ」

翠咲は倉橋を見上げた。
ん?なんだ?と見下ろされる。
整った綺麗な顔は他の人から見たら、あまり表情は動いていないように見えるはずだ。

けれど、今翠咲を見ている倉橋はいつになく甘くて、優しくて、そして熱を感じる。
< 119 / 231 >

この作品をシェア

pagetop