フォンダンショコラな恋人
これが他の人ならば反論はしないのだが、他ならぬ結衣である。
「皆、感じ良いって言うんだけど、私にだけ感じ悪いのかしら」

「ん? 感じ悪かったです? 体育会っぽい人ですよね。がははって感じの」
「体育会? 全然。むっちゃ、線の細い、どっちかって言うと理数系な感じ」

倉橋のイメージを思い出しつつ、翠咲は結衣にそう伝えた。
そして、あの淡々と理詰めで無表情に詰められた時の事を思い出し、ムカムカしてくる。

翠咲は思わず、目の前の生搾りレモンサワーを煽ってしまった。

「ごつくないです? もう、佐野さんばりの」
「細っそい。吹いたら折れそう」

機嫌が悪いので若干の口の悪さは勘弁して欲しい……しかし同一人物で、こうも印象が変わることがあるだろうか?

「別人……よね?」
「……ですね。身長どれくらいです?」
「175センチ前後かなぁ。佐野さんとは対極みたいな人だよ?」

「宝条さん、それ絶対別人ですよ」
「そういう事かあ……」
道理でみんなの印象とは合わない訳だ。

別に自分だけに感じが悪かったわけではなかったのだと分かって、翠咲は安心した。

しかし、感じが悪いことは否めない。
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