フォンダンショコラな恋人
「玄関は奥まっているので、さほど気にならないとは思いますが、まあ、確かにそうですね」
陽平が気になったことに、営業担当者がなるほど、と頷いている。

「翠咲は?少し歩くことになるけど、構わない?」
「はあ……」

生返事を返す翠咲をちらりと見て、陽平は真後ろに立って、後ろから囁いた。

「君もこの部屋に住む前提で話をしているんだけど?」

「はっ?!」
ぐりん!と翠咲は振り返る。陽平の表情は相変わらずだ。

だから!!表情っ!!
全然分かんないから!

それでもほんの少しだけ、いつもより顔が赤いような気もする。
それは翠咲でなければ分からないくらいの変化だ。

「それって、ルームシェア……的な……」
「僕は恋人とルームシェアするような趣味はない。こういう場合なら、結婚前提の同棲というところが妥当だろう」
憮然として陽平は翠咲を見返す。

妥当……って。
ふと気になった翠咲が営業担当者の方を見ると、そーっと営業担当者は目を逸らせた。
< 198 / 231 >

この作品をシェア

pagetop