フォンダンショコラな恋人
「あのー、15分くらい外しますので、ごゆっくりご観覧くださいね……」
そう言い残して、そそそーと彼は出て行った。

あ、ちょ……。
「気を使ったか……」
「使わせたのよ!」

「なあ、翠咲……」
後ろからきゅうーっと抱きしめてくる陽平の顔が近い。
しかも滅多に見せないような甘えるような表情なのだ。

顔が……顔がいいのよ!
それでも翠咲にはもう分かっている。
陽平はこんな表情は二人きりの時にしか見せないし、翠咲にしか見せないのだ。

「結婚前提の同棲……ねえ……」
「結婚してもいいけど」

そんなつぶやきが聞こえてきて、翠咲がゴホッ!と思わず咳き込んでしまうと、陽平はなでなで、と背中をさすってくれる。

「それって、プロポーズ……?」
「いや、単なる事実。翠咲とならいいかなって思ったんだ。うーん、それも的確ではないな。そうだな、翠咲とならしたいって思ったんだ」

笑わないで!可愛すぎる!!
翠咲の気も知らないで陽平はそんな風に言うから。

「そうか、プロポーズならそれなりに何かしないといけなかったな。サプライズとか、薔薇の花束とか」
「いや、充分驚いたから、もういい……けど」
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