フォンダンショコラな恋人
「面倒くさくて、悪かったですね」
「いや? オレ、陽平のそういうとこ気に入って、来てもらってるか」

そんな事を言っていても、名刺に『イソ弁』と明記される訳ではない。
単純に世間話の流れでそうなっただけだ。

「今はそういう海外の流れを受けて、アソシエイト弁護士とか言うんだろ?」
「まあ、そうですね。実際前の所はそうでした」

倉橋陽平は頭がいい。
そもそも、勉強する事が嫌いではない。

中学生の頃、将来をどうしようかと考えた時に、ある程度報酬の良い職業に付きたいと考えた。

パイロット、医師、弁護士……報酬のいい仕事はいろいろある。
しかし小学校を卒業する頃に既に目を悪くしていたし、パイロットの道は早々に諦めた。

医師も検討の範囲内ではあったが、パイロットも医師も当然頭の良さは求められるけれど、それ以上に専門的な学校に相応の資金が必要なのだと分かった。

倉橋の家は別にそこまで裕福ではない。
普通に大学くらいは行かせてくれるだろうが、結果何千万もかかるような大学に行かせて欲しいとねだるのは難しい……と思った。
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