(仮)愛人契約はじめました
「しかし、なんでも願いを叶えてくれるとは、王様と下僕というより、魔法のランプだな」

「いや、なんでもは叶えませんよ……」

 でも、魔法のランプとは、意外に可愛いこと言うなと唯由が思ったとき、蓮太郎が呼びかけてきた。

「おい、魔法のランプ」

 どっちかと言うと、ランプの精かと思いますね。

「みっつの願いのうちのひとつめだ」

「……何故、増えました」

 おそらく、魔法のランプという言葉に引きずられてしまったのだろう。

 だが、まあ、所詮は酔っ払いの戯言(ざれごと)

 たいしたことは言ってこないだろうと唯由は(たか)をくくっていた。

 何故なら、蓮太郎はコンパの最初から最後までハメを外すこともなく、綺麗な食べ方で食事をし。

 きちんとしたおうちで育てられたんだろうな、という雰囲気を(かも)し出していたからだ。

 三回まわってワンと言えと言われても、ワンと言おう。

 それで済むのなら、と唯由が覚悟を決めたとき、蓮太郎が言った。

「では、ひとつめの願いだ。
 お前、俺の愛人になれ」

 食べ方もしつけも、なにも性格には関係なかったようだ……。

 王様の声が反響する静かなシャッター街で、唯由はぼんやり、そう思っていた。




< 16 / 445 >

この作品をシェア

pagetop