辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「どうかされましたか?」

 サリーシャが目をまん丸にしてセシリオを見上げる。セシリオはくくっと肩を揺らした。

「いや、きみは本当に可愛らしいと思ってな」

 そう言った途端にサリーシャの顔は、耳まで真っ赤になる。セシリオはそんなサリーシャの頬に手を伸ばし、そっと撫でた。滑らかで柔らかい感触が、指先から伝わってくる。赤くなっているせいか、いつもより少し熱をもっていた。

「……明日は無理なのだが、明後日であれば半日くらい時間が取れそうだから、約束していたデオの乗馬で出掛けようか?」
「本当ですか? 行きたいです!」
「では、決まりだな」

 サリーシャの表情が、大輪の花が咲いたかのように綻び、瑠璃色の瞳が歓喜の色に染まる。セシリオはその様子を愛しげに見つめ、瞳を優しく細めた。


 
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