辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 サリーシャは広い屋敷の中を探し始めた。と言っても、全く見当がつかないので行く場所行く場所が空振りだ。ダイニングルームや図書室、中庭も見に行った。けれど、セシリオはいない。会いたいのに会えないと、益々会いたいという気持ちが募った。

 ──早く会いたい。
 ──早く話したい。
 ──そして、ぎゅっと抱きしめて欲しい。

 当てもなく歩き回っていたサリーシャは、モーリスを見かけて、セシリオを見ていないかと尋ねた。

「セシリオ? うーん、執務棟にも私室にもいないなら、厩舎かその隣の訓練場だろうな」
「厩舎か隣の訓練場?」
「ああ。昔っから、姿が見えないときはそこにいることが多い。たぶん、馬の世話をしているか、剣の訓練をしているんじゃないかな」
「そうなのね。ありがとうございます」

 顎に手を当てたモーリスにそう言われ、サリーシャはパッと表情を明るくした。そのまま屋敷を出ると、まっすぐに厩舎へと向かった。大きな厩舎には百頭を超える馬が繋がれている。入り口の前に立つと、サリーシャはひょこっと中を窺った。
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