辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「──わたくし、閣下とここをお散歩できるなんて、夢みたいです」
「これからは、定期的に来ようと思う。きみも、殿下やエレナ様に会いたいだろう?」
「いいのですか? 領地をだいぶ不在にしてしまいます」
「不在にしても大丈夫なように、事前に調整して仕事をこなすようにする。流石に、年に何度もは無理だが、二年に一度くらいは顔を見せろと殿下にも言われた」

 不安げに見上げるサリーシャを見下ろして、セシリオは微笑んだ。こんなふうにサリーシャを気にかけてくれるところも、堪らなく好きだ。

 その後もしばらく散歩を楽しんだセシリオとサリーシャは、懐かしい場所の前で足を止めた。

 庭園の外れのそこは、生け垣がL字を組み合わせたような形になっており、中の様子はうかがえない。そこを目にしたサリーシャは、グイグイとセシリオの手を引いた。
 サリーシャは、ここはとても背が高い生け垣で囲まれていると記憶していたが、久しぶりに訪れると生け垣の高さはサリーシャの背と同じくらいだった。けれど、雑草一つない王宮の庭園でここだけはシロツメクサが沢山咲いているのは変わらない。

「花冠を作る?」
「作ってもいいですか?」
「もちろん」
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