辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 肩を竦めるセシリオを見上げて、サリーシャはふふっと微笑む。セシリオの正装用の軍服姿はピース・ポイントに向かうときに着ているのを見たが、確かに衣装の上側半分が勲章で埋め尽くされていた。

「閣下のあの軍服の正装姿は、とても素敵なので好きです」
「そう? なら、今日も軍服で来ればよかったかな?」

 そう言いながらセシリオは自分の姿を見下ろす。セシリオが着ているのはよくある貴族の正装用の黒い礼服だ。これはこれで素敵なのだが、サリーシャはやっぱり深緑の軍服を着たセシリオがもっと素敵だと思った。

「今日のそのお姿もとても素敵ですわ。でも、あのお姿はもっと素敵です。思わず見惚れてしまいましたわ」

 視界の端に、セシリオが耳の後ろのあたりを掻くのが映った。よく見ると、ほんのりと耳が赤い。好きになった人は勇敢で、誠実で、優しく、そしてちょっぴり可愛らしい。世界一魅力的な人だと思った。
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