政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 これほどまでに強く惹かれる人と出会ったのは初めてで、戸惑ってもいた。ずっと私にとって大切な存在は両親と妹の瑠璃だった。

 とくに母が亡くなり、父もいなくなってからは瑠璃が私にとってすべてで、瑠璃以上に大切な存在などできないと思っていたのに……。

 こうして寝顔を眺めているだけで胸がキューッと締めつけられる。

「航君、大好きです」

 想いが溢れ、言葉となって口をついて出た瞬間、いきなり身体を引き寄せられた。

「キャッ!?」

 悲鳴にも似た声を上げた私は航君の上に乗せられ、背中にはしっかりと腕が回されている。顔を上げて彼を見れば、しっかりと目を開けていて私を見るなり、少しだけ唇の端を上げた。

「おはよう、千波」

「おはようございます。……もう、起きていたなら声をかけてくれたらいいじゃないですか。いきなり引っ張られてびっくりしました」

 それにこの体勢も恥ずかしいから止めてほしい。

 彼の上から降りようとしたけれど、そうはさせまいとさらに強い力で抱きしめられた。

「こ、航君?」

「可愛い顔で俺を見る千波が悪い。こうやって引き寄せて抱きしめたくなるのも当然だ」

 弱々しい声で抗議する私に彼は、愉快そうに続ける。
< 113 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop