政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「疲れた」

 こういったパーティーに参加するのは、これが初めてではない。

 初めて連れていってもらったのは五歳の頃で、最初はキラキラとした世界に興奮した。それに行けばおいしい食べ物が食べられるという単純な理由もあって、父に行こうと言われれば喜んでついていった。

 だけどそれも小学校に上がるまでの話。学校は大学までエスカレーターでいける有名進学校へ進んだ。そこはすでに大人の社交場が出来上がっていた。

 家柄を重視した序列が学校内にはあって、俺はすぐに頂点に立った。上級生もが俺に敬語を使う学校生活に、なんとも言えない寂しさというか虚しさを感じた。

 この学校では、決して俺をひとりの人間として見てくれる人はいない。庵野グループの人間としてしか見られなかったんだ。

 そんな俺に友達と呼べる存在はおらず、近づいてくるのは下心があったり、恐れたりする人ばかり。

 十歳になる頃には、庵野の家に生まれたからには普通の生活はできないんだと痛感させられた。
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