政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 そうなるとパーティーについていっても、俺も将来は父のような立場となり、面倒な挨拶を笑顔で繰り返ししなくてはいけないんだと思うと憂鬱になる。

 ホテルの中庭にある庭園には緑が多く生い茂っていて、中央には小さな噴水があった。その周囲を囲むようにベンチが設置されており、そのひとつにゆっくりと腰を下ろす。

 そのまま空を仰げば、どんより曇り空で今にも雨が降りそう。

 家に帰ったら明日の授業の予習とテスト勉強をしないと。だからできるだけ早く帰りたいけど、どうだろうか。

 庭園にある時計で時間を確認すると十五時を回ったところ。昼過ぎから始まり、夜までかかると言っていたから帰りたいという願いは叶いそうにない。

 ため息を漏らしてそっと目を閉じた時、草木をかき分けるようなガサッという音が聞こえてすぐに目を開けた。

 そして音のしたほうへ目を向けると、ひとりの女の子が顔を出した。ピンクの愛らしいパーティードレスを着ていることから、俺と同じで親についてきたようだ。

 女の子はクリッとした大きな目をさらに見開いて、勢いよく俺の前に駆け寄ってきた。

 びっくりして微動だにできない俺を見て、女の子はさっきの言葉を言ったのだ。

「だめ? 千波の王子様になってくれない?」

 なにも言わない俺をジッと見つめながら首を傾げる。
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