政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 でもなぜだろう、この子が一度だけ会った千波のような気がしてならない。それなら確かめるまでだ。

「じいちゃん、この子と会う機会を作ってもいい?」

「本当か!?」

「あぁ、会いたい」

 俺の手のひら返しに祖父は大喜び。すぐに見合いの場を設けてくれた。俺が千波に会いたがっているということも、しっかりと伝えて。

 見合いまでの間に、部下に千波のことを調べてもらった結果、やはり彼女は俺の初恋の子だった。

 パーティーには滅多に顔を出さないようで、あの日はたまたま懇意にしていた企業だったから参加していたようだ。

 祖父が言っていた通り、今は妹とふたり暮らし中。その妹も心臓を患っていて入院しているという。それも病状は深刻だとも聞いた。

 千波は大学を中退し、バイトをかけもちして借金の返済と妹の治療費を稼いでいた。つらい状況にも関わらず、毎日笑顔で過ごしているという。

 そんな彼女の話を聞いてしまったら、どうにかして救ってやりたくなった。でも千波が俺のことを覚えている可能性は低い。

 それなら俺とは面識がない状態だ。そんな俺からいきなり借金を返済して妹の治療費を出すと言っても、警戒されてしまうだろう。

 でも俺にとって千波は初恋で、淡い恋心はずっと消えずに残っていた。この想いは言い伝えの相手だということを知ってますます強くなり、あれほど迷信だと思っていた言い伝えさえも、運命に思える。
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