政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「だってその時のあなたは言い伝えのことはなにも知らなかったでしょ? 下手に知られて航さんと面識を持たれたら大変だったもの。だからあなたの父親に頑張って動いてもらったのよ」

 あまりに身勝手なもの言いにカッとなる。

「ふざけないで! お父さんがどんな思いでこれまで旅館を守ってきたと思っているの!? お母さんだってきっと、心残りだったはず」

 旅館の経営が思わしくないと気づいていたから、あの着物を伯父に託したと思う。それでも父になにも言わなかったのは、最後まで父のことを信じていたからかもしれない。

「瑠璃だってお母さんが亡くなってお父さんまでいなくなって、それで一気に病状が進んだの」

 きっと精神的なものだと思う。一気に心臓に負担がかかったのだろう。

「神屋敷さんの身勝手な思いのせいで、私たち家族がどれだけつらい思いをしてくたか……! 許せない、あなただけは絶対に許せない!」

 怒りは涙に代わって溢れ出す。

 父は今、どんな思いでどこにいるのだろうか。ひとりでなにをしているの? 父の気持ちを考えると、悔しくて仕方がない。
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