政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「その顔だと、どうやら知らないようだな」

 少しだけ困ったように眉尻を下げた彼は、知っていることをすべて話し始めた。

「キミの家系は、遥か昔から不思議なことに三世代に一度しか女児が生まれない。現にそうじゃないか?」

 そう言われてみれば、父も祖父も男兄弟しかいない。今までとくになんの疑問も思わなかったけど、それがずっと続いていたってこと?

「それには理由がある。……うちの一族はキミの家系に三世代に一度生まれてくる女子が二十歳を迎えた時に契りを交わし、そして宿った子が一族に繁栄をもたらすと言い伝えられている。その証拠に庵野家が始める事業はどれも成功してきた。それはキミも知っているだろう?」

「……はい」

 庵野家を知らない人は少ないほど有名だもの。不動産はもちろん、多くの事業を次々と成功に収め、庵野グループとして国内のみならず海外にも知られている。だけどその成功にうちの家系が大きく関わっていたなんて……。

 すぐには信じることができない話で戸惑いを隠せない。だけど、庵野さんが嘘を言っているようには思えなかった。

 庵野さんは一族の繁栄のために私と結婚して、私に子供を産んでほしいんだ。やっと彼が好きでもない私に求婚してきた理由に納得がいった。それと同時に、昔から母に言われ続けてきた言葉が頭をよぎる。
< 21 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop