政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「母は幼い頃からずっと私に、結婚は好きな人としなさいと言い聞かせていました。……どうしてそんな当たり前のことを言うんだろうって不思議に思っていましたけど、母の気持ちを今、初めて理解することができました」

 きっと私に庵野家との関わりを伝えなかったのは、両親の優しさだったと思う。きっと聞かされていたら、二十歳を迎える瞬間を不安に思いながら過ごしていただろうから。

 でも庵野さんは? 私とは違い、一族の行く末の責任がすべて自分に圧し掛かっていることを聞かされ続けてきたんだよね?

 彼の気持ちを考えると、複雑な思いに心を覆われる。

「キミの母親の気持ちは理解できるが、俺には庵野家の今後の命運がかかっている。……どんな条件だって呑む。だから俺と結婚して、二十歳を迎える瞬間を一緒に過ごしてほしい」

 彼の言う言葉の意味を理解できないほど子供ではない。でも庵野さんはそれでもいいの?

「私は、結婚は愛する人とするものだと思っています。だってこの先の未来をずっと一緒に過ごす相手ですよ? それなのに庵野さんはいいんですか? もしかしたら迷信かもしれません。庵野家が栄えてきたのは、実力があったからではないですか?」
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