私は天使に侵されている
「美麗ちゃん」
「ん?」
「来夢のこと、ほんとに好き?」
「え……ど、どうしたの?急に…」
なかなかファンから解放されない来夢を見ながら、ふと健悟が言った。

「来夢がどんな人間か、もう…わかってるだろ?」
「う、うん…」
「美麗ちゃんみたいな純粋な人が、金の為に付き合ってるとは思えないし」
「ちゃんと、好きだよ。来夢のこと。
………ってなんか、変だけど。ちゃんと好きなんて……」
「そう……だったらいいんだ」
健悟は静かに言って、少し切なそうに微笑んだ。

「健悟くん?」
「ん?」
「大丈夫だよ!」
「え?」
「ほんとに、来夢のこと好きだから傍にいるんだよ。だから心配しなくて大丈夫!
今だって、女の子に囲まれてる来夢を見てヤキモチ妬いてる位なんだから(笑)」
「フッ…!!そうだな。
そろそろ行ったら?
来夢、寂しい!って(笑)」
「もう…(笑)!!絶対面白がってるでしょ!?」
「フフ…(笑)」
「でも、頑張って行ってくる。
少し、寂しいから」
そう言って、タタタッと来夢の方に駆けていった美麗だった。

「来夢!!」
気の小さい美麗。
深呼吸して、来夢を呼んだ。
「あ、美麗~!」
来夢はファン達にうんざりしていて、呼びに来た美麗にすがるように抱きついた。
「来夢…」
美麗も思わず、来夢にしがみついた。

「ごめんね、もう…寂しい思いをさせないって言ったのに、また寂しい思いをさせちゃった……」
「ううん。大丈夫だよ…!
でも、寂しかったな……」
「うん、ごめんね…!」
しばらく二人は、抱き締め合っていた。

「なによ、来夢様を一人占めなんて許さない……」
「彼女だからって、いい気になりすぎなのよ!」
来夢のファン・草野達が呟いていた。
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