私は天使に侵されている
たまり場に着き、杉宮が助手席と後部座席を開けた。
「着きました。降りてください」
杉宮の声かけで降りようとするが、恐怖で震え降りられない。

「あの…お急ぎください。
来夢様は本来“待つ”ということはされません。
ただでさえ“かなり”ご立腹状態です。
その上、これ以上待たされると怒りは倍増しますよ?」
「は、はい…」

なんとか震える身体を動かし降りた三人。
ゆっくり、杉宮について行った。

重そうな扉を開けると、十数人の男達が固まっていた。
一番奥の二人掛けのいかにも高級なソファに、来夢が足を組んで座っている。
健悟や明博もいて、来夢以外は周りに立ち待機している。

「来夢様、お三方をお連れしました」
「遅いよ!!僕、待ちくたびれたぁ!」
「申し訳ありません!」
杉宮が深く頭を下げた。

「もういいよ、杉宮は下がって!」
「はい、失礼しました」
来夢の言葉に杉宮は、再度頭を下げ去っていった。

「来夢様!ご、ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
「すみません!」
「許してください!美麗さんにも、謝りますので!」
草野達三人は頭を下げ、必死に謝罪の言葉を言い懇願する。

「健悟」
「ん?」
「煙草、ちょうだい!」
「ん」
健悟が煙草の箱を渡し、来夢が一本咥えた。
そして火をつけた、健悟。

「灰皿って、可哀想だよね…」
「え?」
フーッと天井に煙を吐いて、唐突に来夢が言った。

「だって、煙草を押しつけられるんだよ?
きっと…痛いんだろうなぁ……」
「そうだな」
特に何の感情もなく健悟が答えた。

「アイツ等、汚ない声で痛がってたから、きっと凄ーく痛いんだと思うよ?」
「え?来夢、何の話?」
健悟が問いかける。

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