たぶん、きっと、すき。
5.癒えない傷と言えない罪 side松田紗月

 強く抱きしめられて、やっと、心が落ち着いた。

 誰かの腕の中で抱かれながら眠ることがこんなにも温かくて、気持ちよいことなんだと知った。

 そして、それはとても苦しく痛いものだとも知った。

 矛盾しているかもしれないけれど、それ以外に表わせないんだ。

 こんな想ってもらえるなんて幸せなはずなのに、どうしても私の涙は止まってくれなかった。

 ハル。

 ハル。

 ごめんね。

 同じように君を愛してあげられたらきっと、ハルも少しは楽だったのに。

 ごめんね。

 拒んであげるべきだったのに。

 ごめん。

 本当にごめん。

 私は、弱いから。

 君を手放す勇気がなかったの。

 もう、あの頃のように必要とされなくなるのが、要らない子だと言われてしまうのが、ただひたすら怖かったの。

 ハル。

 捨てないで。

 私を、パパみたいに否定しないで。
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