無彩色なキミに恋をして。

父は『これから大変だろうが君なら大丈夫だ』と鮎沢さんに握手をと手を差し出すと、彼も『はい』としっかりと頷いて強くその手を握り返した。


そして私達も――――――


「緋奈星さまにも色々とご迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」

「そ、そんなッ
 やめてくださいッ」

父との話が終わったあと、彼を会社の外まで見送るため燈冴くんとエントランスまで同行し、迎えのタクシーが到着している車寄せで深々と頭を下げる鮎沢さんにわたしは困惑。
頭を上げるように伝えると彼はゆっくりと顔を上げた。

「こんな形ではなく、もっと早くに緋奈星さんに出会っていたら良かったのに…」

「えっと…」

「そういう発言は控えて頂いても宜しいでしょうか」

わたしが答えるより前に燈冴くんからのストップが入ったため、わたしが何も言えなくなる。

「僕はまだ緋奈星さまを諦めたわけじゃありませんから」

「だからそういうことは―――」

「本気なんです」

燈冴くんを遮って発した鮎沢さん。
揺れる黒い瞳にドクンと胸が煽る。

「最初こそ父親の決めた婚約の話だったけれど、緋奈星さまの社長や会社を想う真っ直ぐな気持ちを少しずつ知っていくにつれて、僕の中の想いも変わった」
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