無彩色なキミに恋をして。

   君の事が好きなんです―――――


視界を遮るように捕らえられてしまう彼の瞳に
わたしは目を逸らす事が出来ない。

こんなに真剣に言われるなんて…―――



「鮎沢さん…わたしは…」

「気持ちは理解しています。
 わかった上で僕は諦めないんです」

どうしてそこまでして…と、疑問ばかりが頭の中を巡る。
気持ち…複雑。

「だからまた、僕は僕なりに頑張ってみます」

そう言って、スッと出された右手。
握手を、という事だけど隣では燈冴くんが眉間に皺を寄せて厳しい表情をしている。

これも…複雑。

だけど彼の想いを拒絶するわけにいかないと思い
わたしも握手を交わした。

「あ…りがとう…」

お礼も伝えて―――



お互いが一礼し、わたしと燈冴くんは鮎沢さんを乗せたタクシーを見つめ続けた。

「行っちゃったね…」

「えぇ。まったくあの人は。
 余計な一言だけ呟いて帰っていきましたよ」

やはり怒っているのか呆れているのか、はぁ…と溜め息を吐いている。
だけどそこには憎しみみたいなものは感じない。

「私達も家に帰りましょうか」

「うん、そうだね」

エントランスで言葉を交わすと
燈冴くんは『車をまわしてきます』とこの場から離れようとわたしから数歩前を歩いたところで、一度その足を止めて振り返った。

「緋奈星さま」

ん?と顔を上げて目を合わせると
彼はニコリと笑顔で言う。





「今晩は、俺と一緒に寝ましょうか」



                         


                fin―――


 


< 232 / 232 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:48

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌/著

総文字数/158,866

恋愛(オフィスラブ)272ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
隣人はクールな同期でした。
氷萌/著

総文字数/232,839

恋愛(オフィスラブ)487ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
マンションの隣に住んでいたのは 一緒に入社した同い年で同期の男でした――― 大手出版社 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) × 大手出版社 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) × 大手出版社 編集部所属 元カレ ●陽向 アルト●-Aruto Hinata-(33歳) × 大手出版社 事務 ●早乙女 ヒナコ●-Hinako Saotome-(23歳) 複雑に絡み合う4人の社会人。 等身大の恋愛を描く 最後の恋。 ――――― 2020年3月14日 無事、完結しました。 短期間の間に 読者数 900人を超えまして 皆さん本当にありがとうございます。 たくさんの方に読んでもらいたいです。 賛否両論あると思います。 その事実を真摯に受け止めながら 次の作品も書いていきます。 ファンになってくださっている方々 面白いと思ってくださる方々 そして、ランキング入り 【総合9位 ジャンル9位】 感謝の気持ちでいっぱいですm(_ _)m 『続・隣人はクールな同期でした。』 宜しくお願いします。
性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。
氷萌/著

総文字数/91,798

恋愛(純愛)161ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
家なし・金なし・仕事なし。 25歳、不運の崖っぷち女の新しい生活拠点は まさかのルームシェアでした。 まだまだ人生これからだって時なのに 契約社員として働いていた先から受けた 契約満了の通知。 同日にアパートの立ち退き通知まで届き ついには住む場所すら危うくなる。  【蓮見 詩菜】25歳(♀)  - はすみ しな - 不動産管理会社で初めて会ったのは 大家の孫だと言う性悪・傲慢な男。  【月影 壱琉】26歳(♂)  -つきかげ いちる - しかし新しい家と仕事を与える好条件をくれる。 崖っぷちからの脱出に成功したと意気揚々と 喜びに満ちたのも束の間。 その家で待っていたのは 無口・無表情の男。  【西園寺 氷彗】25歳(♂)  - さいおんじ ひすい - 新しい大家:壱琉の持ち家に 幼馴染である氷彗と 謎の共同生活”ルームシェア”を始める事になった 詩菜は、管理人を任せられる事になった――――

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop