冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
俺が席を立つと、案の定、勝手になすりつけていたイメージが崩れたと騒がれた。
どうでもいいんだ。誰にどう思われようと、俺には自分のやりたいことしか見えていない。誰かのやりたいことに関わっている時間はなく、興味もない。
トロイメライの外観が思い出せないのは、入るときも、出るときも、俺はなにも見ていないからだろう。
見ないようにしているのだ。見えないものには色を着けない。灰色にして視界から消す。そうすると、自分のことしか考えなくて済む。
『あの!』
背後から近づく声に足を止め、振り返る。
駆けてくる人影はなぜか夢中で俺を追いかけており、これは写真を撮らせろとか握手をしろという用件ではないと思い、素直に待った。
彼女を視界に入れた瞬間、トロイメライの外観が見えた。
歴史ある荘厳なホワイトの建物をバッグに、彼女のトリックアートのワンピースが風になびいている。
足もとにはレンガの歩道がこちらへ続いていた。
まるでそれがレッドカーペットかなにかのように、彼女はその上を駆けてくる。
近くへ寄った彼女の水色と白のトリックアートは、不思議の国のアリスを連想した。