冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす



「眠れないのか? 芽衣」

収録から帰った瀬川さんと夕食を終え、いつも通りベッドに入った。
食事中、ジータが喋らないことに「なにをやってるんだアイツは」と怪訝な顔をしていたが、原因が〝ほかに好きな女性がいる〟という事実だとは気づいていない。

私はまだ半信半疑だ。

好きな女性がいながら私とこんなことになるはずがない。
ひと目惚れとはいえ、私に対する気持ちを吐露してくれたあの夜に言っていたことがすべて嘘だとは思えなかった。

「……瀬川さん」

「なにか悩みでもあるのか」

「えっと……」

いざ聞こうと思うと、言葉が出てこなかった。
「ほかに好きな人がいるんですか?」と尋ねて、もしも肯定されてしまったら?

出会ったころに感じていたすれ違いのように、「ああそうだ。それがなにか問題か?」なんて言われたら立ち直れない。

「芽衣?」

今はもう彼の気持ちを疑おうなんて思っていなかったのに、その可能性が捨てきれなくて怖かった。
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