冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
私を見ている。
ハンカチを渡したときの彼は終始呆然としていた気がしたが、今は少し違って、まるで彼の周りだけ時が止まったように佇んでいる。
右手には渡したハンカチが握られていた。
目が合っているようで合っていないのかもしれない。
視線はぶつかっているのに、彼は私にお辞儀をするわけでも、慌てて逸らすわけでもなく、ただじっと見ていただけだった。
耐えられなくなり先に私が会釈をすると、彼はやっと、ハンカチをジャケットの内側に入れて立ち去った。
結局、向こうからはお礼も会釈もなかったけど。なんだろう、このざわざわとする気持ちは。こんなの初めて。
それからずっと彼のことが気になって、パンケーキの味などわからなかった。