冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「遅くなりましたが瀬川社長、ご結婚おめでとうございます。そういえばテレビで奥さまのこと、ひと目惚れだとかなんとか……」
「ええ」
「ふふふ、瀬川社長もバラエティーだと冗談とかおっしゃるんですね」
イヤミになるかならないかスレスレを攻めている発言に、私の胸はちくちくと痛んだ。失礼な真似はできないから言い返せないし、そもそもそんな勇気はない。
せめて瀬川さんがなにか言ってくれれば救われるのだが、鈍感な彼は追及せずにさらっと流してしまう。
「きゃっ」
すると髪を巻き上げた方の女性のヒールがカクンと揺れた。
彼女はバランスを崩し、一歩うしろにいた私へと前屈みになる。
ピシャッという音とともに冷たい感覚に襲われ、目が冴える。
彼女の持っていたグラスの赤ワインが、私のジャケットの胸もとを赤く染めていた。