冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「あっ……」

急いで袖を抜き、私は背を丸めてジャケットを返した。
恥ずかしすぎる。私は太っているわけではないと思うけど、モデル並みに細いこの人とサイズが合わないことは一目瞭然だ。
とくに二の腕はもっちりとしている方だから、わざと余裕があるジャケットを着ていたのに。

「本当にごめんなさいっ。弁償します。おいくらですか?」

値段を聞かれ、答えられなかった。答えたら「そんなにお安いんですか?」と返されてしまう気がしたのだ。

彼女たちの声が大きいせいで、周囲のゲストたちの視線もこちらへ向いている。なぜだか皆、私を笑っているのではないかと思った。

「芽衣。一階のドレスルームで新しいものを買ってしまおう。そんな格好ではダメだ」

瀬川さんまで。
肉付きのよい二の腕がむき出しのこの格好では、さすがに連れて歩くのが恥ずかしいのだろう。
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