思っていたのと 違うのですか‼︎

 今となっては手を打っておけばよかった案件でも、当時の姉にとっては納得の出来るものではありませんでした。

 それはそうなのでしょう。

当時お付き合いがあった方が時代の申し子とまで言われた若き億万長者だったのですから。

「家柄だけで判断すれば、我が家と縁を結ぶに値しない家柄だとしても、メディアを賑わす財力とルックスを持ち合わせた方こそ私に相応しい」と「家柄しか取り柄のない知り合いの御子息など私には相応しくない」などと両親とのやり取りが繰り返す中、

「これは家と家との婚姻だ。彩華の意思の問題ではない。」と父が申せば、

「なら、私ではなくても構わないではないですか!女なら誰でもいいのなら、そこにいるではないですか!ちょうどいい女が!」と姉が私を指差しながら言い、

「でも智(アキラ)さんは寡黙な方だから、華やかな彩華ちゃんの方がお似合いじゃないかしら」と母が申せば、

「そんなつまらない男こっちからごめんだわ。私は常に愛を囁いていただきたいの!どうせあちらのご両親とも一緒に暮らすのでしょう。それこそ、私よりのこの子の方がちょうどいいではないですか!」と私に指を刺したまま言い返します。

 人を指で刺すでない‼︎と心の中で思いながらも、今のやり取りは使えそうだと心の中でメモを取っていると

「それも一理あるかもしれない」と他人事の様にやり取りを聞いていた兄が呟くと、

仲間が出来たと「でしょう!さすがお兄様」と嬉しそうに姉が言います。

「智さんは彩華の様な前に出る女はタイプじゃない。
 華やかでなくても3歩後ろを歩き余分な事を言わない智美の方が少しでも長く続くかも知れない。
 どうせうまくいかないなら、向こうから縁を切りたいと言ってくれた方が面倒がなさそうじゃないか。
 離婚なんて今時珍しくない事だし、向こうから離婚を言われればこちらの体裁も悪くないのではないですか?」

 名案だと言わんばかりに主張しておりますが、
「お兄様。さりげなくディスるのはやめていただきたい。そして、離婚される事を前提で話を進めるのもやめていただきたい。」と心の中で反論はしております。

 
< 5 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop