思っていたのと 違うのですか‼︎
残された根津の前に立つと
「根津さんはこのまま専務の下に置いておく事は出来ません」
俯いていた根津が顔を上げる。
「それは今回の事だけではありませんよ。仕事を疎かにしたからです」
どこぞの住職の説法と聞いている気分になる。
「彼らは有能な社員達です。私に報告がないとでも?」
斉藤は憐れむような目から、しっかり根津を見ながら言う。
「根津さんには2つの選択肢があります。
秘書課に戻りアシスタントとして一からやり直すか、立ち去るかのどちらかです」
はっきりと言い切った見せない斉藤の姿に、周囲が驚く。
普段はどことなくふわふわしている斉藤。
我が社の重鎮とは言われていても、ピンとこない社員の方が多かったに違いない。
「根津さんが立っているその場所は、根津さん自身の力だと言う事を私は知っています。
今日は終わって下さい。
週末です。どこで間違ってしまったのか、じっくりと思い返してください」
少しだけ表情を緩め、帰宅する根津を見送った。
「お優しいんですね」
「失敗は誰のでもあります。
切り捨てるのは簡単ですが、成長には繋がりません。人が成長しない会社は会社も成長しません。大事なのは、失敗をどう取り戻すかです。
これは社長から教わった事です。」
「専務ですら、失敗してますしね」
「ちゃんと取り戻して下さるといいのですが」
「ダメでもサイン本はなんとかしますよ」