思っていたのと 違うのですか‼︎

「何がだ」


突然聞こえる聞き覚えのある声に振り向く。

ビシッと決まったスーツ姿の智さんが立っていた。

額に軽く汗をかき、苦しいのかネクタイを緩める。

私の横に座ると、手に持っていたペットボトルの水を喉を鳴らしながら飲む。

「お前も飲むか?」と差し出されたが、下を向き首を振った。


沈黙が流れる。

周囲の音が先程より重く感じる。

気まずい。
ここは私だけの癒しスポットだったはず。
何故ここにいる。

「で、何がわからないんだ」

私の方をしっかりと見ていた。
視線を逸らすと、ふぅとため息が聞こえた。
体が固まる。

「思ってる事全部言え」

ちゃんと聞いてやるからと、優しい声が私の心を和らげる。

旦那様と言いかけると、咳払いをする。

顔を見上げれば、「智だ」と眉間に皺が寄っていた。だが、怒っている顔ではなかった。

「智さんは何故、私と結婚したのですか?」

「“さん”はいらない。まぁ、おいおいか」と呟くと「俺は、お前だから結婚した」とはっきりとした口調で言った。

智さんの目を見れば、真っ直ぐと私を見ていた。恥ずかしくなり、視線を落とす。

「山野の娘と結婚したかったのではないのですか?」

自分で言って悲しくなり、声が小さくなる。

「そうだ」とキッパリ言われ、やっぱりと足元に視線を落とす。

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