貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
ジェシカとの二度目の対面は、それからしばらく経ってから参加した夜会だった。警備の当番に当たっていなかった私は、いつもの騎士の装いではなく、堅苦しい貴族の装いで出席する側の人間になっていた。
本来、夜会など面倒なものに出席したくはなかった。が、これでも侯爵家の人間だ。理由をつけて欠席するのはほどほどにして、渋々顔を出していた。
「あら、フェルナン団長さん。ごきげんよう。この子、私の娘のグレイスです」
「フェルナン様。私と踊っていただけませんか?」
「それなら、次は私と……」
かつては戦の鬼と呼ばれ、おそれられていた私のこと。仕事柄、普段から目つきが鋭くなりがちなことは自覚している。おまけに大柄な体つきをしており、女性や子どもからはどちらかと言えば怖がられる方が多かった。
加えて、34歳ととっくに結婚適齢期の過ぎた独り身だ。好かれる要素はないと自覚していたし、それでいいと思っていた。
しかし、情勢が落ち着いてきた昨今。どうやら貴族の女性の間で、私の価値はずいぶんと上がっているようだ。戦の功労で陛下からの覚えもめでたく、与えられた数々の勲章。
侯爵家の人間といえども継ぐのは兄で、自分はお気楽な次男だった。爵位を継がない次男坊など、婿入りを望まない限りそれほどの価値はない。
けれど、褒賞の一つとして伯爵の称号を与えられてしまえば話は違う。一気に将来有望な婿候補の出来上がりだ。
夜会でのダンスとは、そもそも男の方から誘うものではなかったか?と、思わず返しそうになるのを堪え、のらりくらりとかわす日々。
結婚願望はないのかと問われれば、あるとは思う。おそらく。今は気楽な独り身でよくても、将来ずっとそれでいいのかと考えると、それはそれで寂しさも感じる。
では、相手は誰でもよいのかと言えば、そんなわけがない。いくら美しい女性だったとしても、常に自分に従うだけの妻など不要だ。なんの面白味もない。
ならば、積極的な女性ならどうかと言われたら、それも考えものだ。意味のない下世話な噂話を垂れ流す女性などもってのほか。男に強請るばかりの女など、鬱陶しいだけ。
こうして自分から近付いてくる女性は、私の地位と金が目的なのだと早々に気が付いて、必要以上にかかわらないようにした。
いつかは想い合う女性と結婚したいと思いながらも、〝この人ではない〟と門前払いするかのように避けてしまっていては矛盾していると自分でもわかっている。
だが、そこで出会った女性となれ合おうなどと思えたこともないのだから仕方がない。
いつしか夜会への出席は、イコール知り合いとの談笑の場となっていた。
「おいおい。それでは嫁さんを捕まえられないぞ」
と、周りから揶揄われるものの、仕方がない。そもそも、ここで声をかけてくる女性には惹かれないのだから。
もちろん、門前払いのようとは言え、その一瞬の間に相手の人となりは見極めるし、おせっかいな仲間が日々勝手に教えてくれる女性らの話を思い出して判断をしている。そうした結果が、この人じゃないなのだ。
本来、夜会など面倒なものに出席したくはなかった。が、これでも侯爵家の人間だ。理由をつけて欠席するのはほどほどにして、渋々顔を出していた。
「あら、フェルナン団長さん。ごきげんよう。この子、私の娘のグレイスです」
「フェルナン様。私と踊っていただけませんか?」
「それなら、次は私と……」
かつては戦の鬼と呼ばれ、おそれられていた私のこと。仕事柄、普段から目つきが鋭くなりがちなことは自覚している。おまけに大柄な体つきをしており、女性や子どもからはどちらかと言えば怖がられる方が多かった。
加えて、34歳ととっくに結婚適齢期の過ぎた独り身だ。好かれる要素はないと自覚していたし、それでいいと思っていた。
しかし、情勢が落ち着いてきた昨今。どうやら貴族の女性の間で、私の価値はずいぶんと上がっているようだ。戦の功労で陛下からの覚えもめでたく、与えられた数々の勲章。
侯爵家の人間といえども継ぐのは兄で、自分はお気楽な次男だった。爵位を継がない次男坊など、婿入りを望まない限りそれほどの価値はない。
けれど、褒賞の一つとして伯爵の称号を与えられてしまえば話は違う。一気に将来有望な婿候補の出来上がりだ。
夜会でのダンスとは、そもそも男の方から誘うものではなかったか?と、思わず返しそうになるのを堪え、のらりくらりとかわす日々。
結婚願望はないのかと問われれば、あるとは思う。おそらく。今は気楽な独り身でよくても、将来ずっとそれでいいのかと考えると、それはそれで寂しさも感じる。
では、相手は誰でもよいのかと言えば、そんなわけがない。いくら美しい女性だったとしても、常に自分に従うだけの妻など不要だ。なんの面白味もない。
ならば、積極的な女性ならどうかと言われたら、それも考えものだ。意味のない下世話な噂話を垂れ流す女性などもってのほか。男に強請るばかりの女など、鬱陶しいだけ。
こうして自分から近付いてくる女性は、私の地位と金が目的なのだと早々に気が付いて、必要以上にかかわらないようにした。
いつかは想い合う女性と結婚したいと思いながらも、〝この人ではない〟と門前払いするかのように避けてしまっていては矛盾していると自分でもわかっている。
だが、そこで出会った女性となれ合おうなどと思えたこともないのだから仕方がない。
いつしか夜会への出席は、イコール知り合いとの談笑の場となっていた。
「おいおい。それでは嫁さんを捕まえられないぞ」
と、周りから揶揄われるものの、仕方がない。そもそも、ここで声をかけてくる女性には惹かれないのだから。
もちろん、門前払いのようとは言え、その一瞬の間に相手の人となりは見極めるし、おせっかいな仲間が日々勝手に教えてくれる女性らの話を思い出して判断をしている。そうした結果が、この人じゃないなのだ。