関係に名前を付けたがらない私たち
 あの頃の遊び仲間とはもう縁がない。

 皆、どうしているんだろう。元気にしてるのかな。
 時々過去を思い出しては、懐かしくなって、けれど日々の慌ただしさに毎日が呑み込まれるように過ぎてゆく。

 そして耕平とは―――

『あいぼん、離婚したら俺んとこ戻って来いよ』

 未だにこんなことを口にする彼に、

「うるさい、犯罪者め」

 相変わらずイライラする私。
 20年前も、20年経った今も、私たちの関係はあまり変わっていない。

 けれどあの日以降、もう耕平とは会わなくなった。
 優希への思いもあるし、私には守るべき家庭がある。
 そして、耕平と私のこの関係を崩すのが怖いという思いもある。

 声だけ、たまに聞く程度の関係が細い糸みたいに続いている。
 多分これからも、この細い糸は切れることなく、続いていくような気がしてならない。

 ある時、私は耕平に訊ねた。

「私たちの関係ってなんだろうね」

 耕平は「あはは」と笑うだけでそれには答えてくれなかった。
 いつもそう。笑って誤魔化されてしまう。それなのに、
 
「耕平は、今でも私のことが好き?」

『うん。好きだよ』

 この質問だけは即答してくれる。
 それを聞いて、私は心のどこかで安心する。

 私たちの関係ってなんだろう。
 耕平はどうでもいいことは教えてくれるくせに、肝心なことは答えてくれない。

―――だから私たちの関係に名前は、ない。

 

FIN
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