朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
だが、試してみるには時間が足りなかったのだ。
縁起物、和、というテーマが決まり、アイデアが浮かぶまでに、実にひと月かかってしまった。
だから全ての準備が間に合わず、ぶっつけ本番。 完成予想図通りに……いや、予想を上回る出来映えになった事に、我ながら驚いている。

「京! 素晴らしいわ……」

「撫子……」

「まさかこんな芸術作品が出来上がるなんて! 」

「ここまでたどり着けたのは、皆んなのおかげだ。組み上げてくれた2人にも感謝だし、何より、こんな素晴らしい端切れを惜しみなく提供してくれた桐野屋さんに感謝だよ。
撫子、ありがとう!」

本当に皆んなのおかげだ。

なかなかアイデアの浮かばない俺を根気よく待ってくれた鹿島部長に父さん。
組み上げてくれた山根さんと加藤さん。
桐野屋の協力。
それに、腐ってた俺に寄り添ってくれた泉。
泉の一言がなかったら、思いつかなかった……。

そうだ。
俺に寄り添ってくれた泉のおかげなんだよ。

「まだ終わりじゃないんだ。
ミニマムバージョンで小風呂敷の亀も加わるから。こっちは撫子が教えてくれた通り、子風呂敷で実際に商品化できそうなものを用いて組み上げる予定だ。かなり可愛い出来になると思う」

規模を5分の1にし、パステル調の子風呂敷に包まれたバームクーヘンの桐箱を組み上げていく。

「わぁ! 亀は可愛い! 」

すっかりHASEGAWAのブースに根を生やしてしまっていた撫子が、感嘆の声をあげた。
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