朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
小さい頃から菓子に囲まれた生活だった。

そんな生活だから、粘土遊びが好きな俺は、ごく自然にバームクーヘンやフィナンシェ、マドレーヌが創作の対象になっていた。

いかにリアルにHASEGAWAの菓子に似せるか。リアル以上に美味しそうに見えるよう質感、色彩にこだわって何度も試作を繰り返した幼少期。

いつの間にか菓子は作らなくなり、イズミ作りに夢中になったけど……。

そんな昔の粘土作りを何故か思い出す。

昨日から、1本1本のバームクーヘンを取上げ、端切れを巻き付けながら感じたこと。

この仕事が好きだ。

いや、俺はHASEGAWAの菓子が好きなんだ。

幸せなことだと思う。
自分が継ぐべき家業が、大好きなHASEGAWAの菓子を世に広めることなんだから。



「京くん、やったな! すごいじゃないか! 」

「鹿島部長!?」

明日の初日に来る予定だった部長が何故ここに?

「いや、気になっててね。
昨日報告は受けていたし、完成直後に山根から写メも送られてきたんだが……。
とにかく早く見たかったんだ。
実際に見るとすごいな。
モザイク画か。圧巻だ……」
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