この恋は、『悪』くない。

中学の友達から

結婚式の招待状が届いた



樽崎くん覚えてるかな?

樽崎くんに話した



「覚えてるよ
沙和とよく一緒にいた子だろ」



「うん
来年、結婚するんだって」



「結婚か…
もぉ、そんな年齢か、オレらも…」



うん

そんな年齢なのかも…



「沙和は?結婚とか考えてんの?」



「んー…わかんないけど
20歳ぐらいの時に占いで
30歳過ぎるまで婚期はこないって言われた」



「へー…じゃあ、するはするんだ」



「占いではね
でも、すごく当たる占い師さんなんだって!」



「フ…沙和が結婚ね…」



「うん、笑えるよね…ハハハ…」



楢崎くんと結婚の話なんて

すると思ってなかった



「オレは、人を幸せにする自信ないから
たぶん、しないかな…」



モテる=結婚には結びつかないのか

モテるから結婚しないのかもしれないし



今も女に困ってないって

余裕な顔してる



「結婚て、幸せなのかな…?」



「フ…それ、オレに聞く?

よくわかんねーけど、幸せなんじゃね?
オレの親は、幸せだったって言ってたけど」



「うちの親は、離婚したけどね」



「ソレ、言うなよ
幸せって、人それぞれだからな

沙和の親だって
今、幸せなら、それでいいじゃん」



「うん、そーだね…」



楢崎くんのお母さんは

亡くなったけど

幸せだったて言ったんだね



うちの両親は離婚したけど

今は

それぞれ好きな事をして生きてる



何が幸せなのか

わからないね



「楢崎くんは、今、幸せ?」



「オレ?
んー…そーだな…それなりに…」



「アメいるもんね」



「んー…
沙和は、結婚して幸せになれよ」



楢崎くんの言葉は

他人事に聞こえた



他人事だよね

私のことなんて



「あ、沙和の会社の人は?」



「会社の人?」



「沙和がよく一緒にいた人」



「あー、森谷さん」



「いんじゃね?」



そんな簡単に言うんだ



なんか

ショックだった



楢崎くんに

森谷さんオススメされると思ってなかった



「なんで…
なんで、樽崎くんがそんなこと言うの?」



むきになった



「沙和は、あーゆー人がいいかな…って
幸せにしてくれそうじゃん
なんかいい雰囲気だったし…」



なんで

樽崎くんが

勝手に決めるの?



森谷さんがどぉとかじゃなくて

楢崎くんに言われたことが

嫌だった



「前に、好きだって言われたよ」



強がって

そう言った



「へー…もぉ返事したの?

オレはいいと思うよ
沙和に似合ってる」



楢崎くん

ホントに?



ホントにそう思ってる?

揶揄ってる?



悔しい?

虚しい?

よくわからない感情



モヤモヤする



「簡単に言わないでよ」



私の気持ち

わからないクセに



「オレ簡単になんか言ってねーよ

沙和に幸せになってほしいって思ってる」



樽崎くんの声は真剣だった



揶揄われたわけじゃないんだ



それなら

尚更

虚しくなる



「そっか…
楢崎くんがそう言うなら…
楢崎くんがそう思うなら…
そうしようかな…」



なんで

こんな話になったんだろう



「そしたら沙和、もぉここ来ないよな?」



え…



「ん…うん、来ないかもね」



勢いで

そう言ってしまった



「アメのこと
かわいがってくれて、ありがとな…」



そんなつもりなかったのに

急に

今日が最後になりそうで



「…」



なんて言ったら

また会えるか



なんて言ったら

またここに来れるか



言葉を探した



「オレも楽しかった
ありがと

また沙和に会えてよかった

お幸せに…」



楢崎くんに

先に言われた



「…」



うん…て

頷くことも



私も楽しかったよって

笑うことも



また会いたいよって

素直に気持ちを伝えることも

できなくて



無言でカバンを持って

部屋を出た



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