この恋は、『悪』くない。

廊下から樽崎くんの声が聞こえる



仕事の話?

でも笑い声聞こえる



このまま朝まで話してたらいいのに…



「あ、また明日…

うるせーな…

じゃ…

フ…バカじゃねーの」



あ、通話終了?



「ごめん、沙和
長くなって…

あとオレが片付けるから
沙和座ってて…」



「ん、もぉ終わるから大丈夫だよ
樽崎くん、ソファーでアメが待ってたよ」



「アメ…」



ニャー…



樽崎くんがアメを抱いて

私の隣に来た



また緊張する



「カズさんなんだって?」



「ただ暇だから電話してきた」



「そーなんだ
カズさんは、私たちのこと知ってる?」



「んー…今日言った」



私たちのこと…で通じた?



しかも

もぉ話したんだ



「そーなんだ…」



「カズに言わない方がよかった?」



「んーん…別に大丈夫だよ」



「カズに爆笑された」



え…



それって

やっぱり

私が樽崎くんに

不釣り合いだから?



そっか…

やっぱり



「樽崎くん、後悔した?」



「なんで?」



「だって、カズさん笑ってたんでしょ」



「沙和は?
もしかして、もぉ後悔してんの?
断わりにくくて返事したカンジ?」



「そぉじゃないけど…」



「そぉじゃないけど?
朝だったし、まだ寝ボケてたとか?」



「そぉじゃない…」



「じゃあ、なに…?」



「私と樽崎くんは…
やっぱり、不釣り合いなんじゃない?
だから、カズさん笑ったんでしょ」



「フ…カズはそんなんで笑ってないよ
たしかに、不釣り合いかもしれないけど…
オレといたら、沙和の品格が下がるって?
それは、今後オレが気をつけます」



「そぉじゃなくて…」



「じゃあなに?」



「樽崎くん、カッコイイのに
私は、こんな地味だし…
だからカズさん笑ったんでしょ」



「フ…カズが笑った理由、オレだから…

オレもカズに笑われて
自分でも笑ったけど…

必死じゃん!て、カズに言われてさ
たしかに必死だったし…

好きだよ、沙和…って家出てきて
カズに話したら、ダサ…って言われて
沙和、引いてたらどーしよ…って
今日1日、考えてた

真剣だったよ、オレ

またダサいこと言うけど
本気だよ、オレ

沙和のこと、好きだから…

後悔なんてしてねーし
後悔させないから…

オレ、こんなだけど
沙和と釣り合うように努力したいし…

いつか愛想尽かされるかもしんないけど
嫌いになるまで一緒にいてよ」



「…」



言葉を発しようとしたら



「オイ!泣くなよ
ちゃんと聞いてた?」



涙が溢れた



「…ん…聞いてたよ…」



「なんか言ってよ
泣くくらい、引いた?」



「んー…

私…

私も…

好き…

樽崎くんが、好きです」



涙で

また樽崎くんの顔を

ちゃんと見れなかった



昨日も

今朝も

恥ずかしくて

見れなかった



樽崎くんはきっと

真っ直ぐ私を見ててくれてるんだろうな



私の頭に

樽崎くんの大きな手が

被さった



今日も

優しい手



「真剣なんで…
これからも、よろしくお願いします」



「ん…はい…こちらこそ…」



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