この恋は、『悪』くない。

ヘルメットを取って

樽崎くんが髪をバサバサした



シャンプーの匂いに混ざって

男の人の匂いがした



楢崎くんは

もぉ中学生じゃないって

実感する



私も髪を整えた



「どーぞ…」



「おじゃまします」



今日は家に彼女いないのかな?

玄関に並んでる靴をチェックした



いくらなんでも

彼女いる日に

わざわざ私を呼ばないよね



一緒に住んでるわけでも

ないのかな?



「こっち…」



リビングじゃなくて

部屋に通された



え…

なに?



変な気ないって

言ってたよね?



そーゆーのじゃないとは

思うけど…



ニャー…



え…



「覚えてる?コイツ」



フワフワした物体が

樽崎くんの足元を擦った



ニャー…



猫?



綺麗な目で私を見上げた

グレーに透ける毛



「え!?アメオ…!?」



咄嗟に出た

その名前



「そおそお…覚えてた?
アメ…ただいま…」



あの時の?



樽崎くんが猫を抱き上げて

キスした



ーーー



ニャー…



あの時

いなくなった?



アメオは

もぉ子猫じゃなくなってた



当たり前のことだけど

時の流れを感じた



「もぉ、忘れてると思った
覚えてたんだ、山咲…
抱く?」



「うん」



樽崎くんの腕にいたアメオを

抱かせてもらった



「わぁ…大きくなってる
あの後、公園にアメオがいなくなって…
しばらく探したけどいなくて…」



「あの後…?」



「うん、樽崎くんが学校来なくなって…
あ…」



樽崎くんが

学校に来なくなった理由



私のせいだったりする?

そしたら

責任感じる



「マジ?探してくれてたの?」



「うん…
急にいなくなって心配だった

楢崎くんのことも…
学校、来なくなったのも、心配だった

私のせい?」



「いや…なんで?…違う

母親が入院してさ
まぁ、だからコイツうちで飼えたんだけど…」



あ、たしか

お母さんが喘息で…って言ってた



「なんで、山咲のせいとか、思ったの?」



「あ…あの…
私が、ちゃんと返事しなかったから…」



蘇る記憶



オレ、好きかも…

山咲のこと、好きかも…



樽崎くんは

もぉ忘れてるかな



「あー…
気にしてくれてたんだ」



その

あー…は

私が思ってる事と

同じ場面を思い出したよね?



あの時は

よくわからなかったけど



森谷さんに言われて

もしかして

そぉだったかな?って思った



ちゃんと返事しない方が

ダメだよね



「ごめんなさい…私…」



「山咲のせいじゃないから…」



「じゃあ、なんでずっと来なかったの?」



他にあったのかな?

学校来れなくなった理由



言いたくないかな?

聞いちゃった



< 89 / 276 >

この作品をシェア

pagetop