あの日溺れた海は、

「ちょっと、はな!足大丈夫なの!?」

汗がうっすらと額に浮かんでいる月が心配そうな顔で駆け寄ってきた。

「大丈夫、ありがとう」

余計な心配をさせまいとへらへらと笑いながらそう言った。
 
 
「そういえばはなが転んだあと、藤堂先生が保健室に入ってったの見えたんだけど…」



月のその言葉に思わず固まった。


先生が、保健室に??
そんな反応をするわたしを見て月はニヤリと笑みを浮かべた。


「怪しい〜、その顔はなんかあったでしょ〜!」


つんつんと指で頬をつつかれてそう聞かれると自然と先程の夢をリフレインさせた。

頬に触れる温かい手

右足に広がる湿布の冷たさ

髪を撫でられる感覚

手を包み込む温もり


一気に顔を赤くさせながらも必死に平静を保ちながら「そんなのないってば」と上ずる声で返した。

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