あの日溺れた海は、

 
「─で、ここにこのlogaMをまずxに置き換えて…」
 
 

放課後の図書室。

対数の性質をワークを開いて一生懸命解説する藤堂先生の隣で、清河さんのキラキラした目はワークではなく藤堂先生の顔に集中していた。

図書室に着いた途端ナチュラルに先生の隣を陣取る清河さんの圧にわたしは悔しさと羨ましさが混ざった感情が心の中で今にも溢れ出そうだった。

 
「え、ちょっと意味わかんない。今日本語話してる?」
 

「てゆーかxってどこから来たの?宇宙?」
 

藤堂先生の向かいに座ったわたしの、右耳と左耳にはそんな素っ頓狂な会話が聞こえてきて薄ら笑いを浮かべることしか出来なかった。
 

そんなわたしたちの様子に気がついたのか、先生は深いため息をついた。


わたしもどうしたらいいのか分からずはは、と乾いた笑いをあげることしかできなかった。
 

「清河さん、私の顔ばっか見て勉強する気がないなら帰ってください。原田さん、私はずっと日本語話してます。武田、xは宇宙から来ないです。」
 

先生は一気にそう言うとまた一つふうとため息をついた。
 
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