あの日溺れた海は、

「亮くんと付き合ってるって噂流れてるけど????昨日亮くんと抱き合ってる写真もみたけど、どういうこと??」


「え??」


普段の姫乃からは想像できないほど落ち着きと怒りを孕んだ声に恐怖を覚えながらも、その想定外の答えに思わず間抜けな声が出た。


それは…とわたしが口を出す前に、わたしと姫乃の間に亮が割って入って「武田さん。」と話し始めた。


姫乃は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに少し不満げな顔で亮を見上げた。


「昨日は俺が無理やり華を抱きしめてしまったんだ。俺たちは付き合ってないよ。ただ俺が好きなだけだから。」

しん…と教室内が再び静まり返った。姫乃は目を見開いたまま亮を見上げていた。

そしてその大きな瞳から涙がこぼれた。
その瞬間教室がざわつき始めた。

伊東さんが慌てて姫乃に駆け寄るのと同時に、姫乃は教室を出て行ってしまった。


わたしはあまりにも正直すぎる亮にため息をついた。


藤堂先生に振られて、亮に抱きしめられているところを誰かに写真で撮られて、クラスメイトからは冷たい視線を送られ、もう心がぐちゃぐちゃだった。

< 324 / 361 >

この作品をシェア

pagetop