エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
『なら、そのときに会ったお友達のお母さんに証明してもらったらいいんじゃないか?』

 私はすぐさま買い物のときに会った友達に電話して彼女のお母さんに聞いてもらった。すると彼女のお母さんが、私が消しゴムを買ったと証言してくれたのだ。

『よかったな、ひな』

『うん、ありがとう。稀一くん、すごい! 困った人を助けるなんて弁護士さんみたい。私のこと信じて守ってくれるんだもん』

 興奮気味に私は稀一くんにお礼を告げる。高校生の彼にしたら大袈裟かもしれないが、本心だった。

 父がよく稀一くんのお父さんを褒めていて、弁護士の仕事を知っていた私にとっては、身近な職業だった。

 弁護士は裁判をするだけの人ではなく、法律の知識で揉め事を解決したり、困った人を助けるのだと。

 友達のお母さんの証言は娘からあっという間にクラス広まり、大人の言い分というもの大きく私の疑いはあっさり晴れた。

 結局、消しゴムはその子を好きだった男の子が意地悪がてら隠したらしく、事が大きくなって言い出せなくなったという顛末が待っていた。

 あのとき稀一くんが力になってくれなかったら私はもっとつらい思いをしていただろうな。

 思い出に浸った後、私は彼に微笑みかけた。 今の彼は本当に弁護士への道を歩んでいるんだ。

『稀一くんにならきっといい弁護士さんになるよ。私が保証する』

 強く言い切ってからはたと気づく。年下の、しかもまだ高校生の私に言われても説得力ないかな? 弁護士になるのは私が想像するよりはるかに大変だろうし。
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