エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
　稀一くんに多少子ども扱いされるのは、仕方がないと半分諦めている。

　年の差はもとより、彼は幼い頃から私を知っていて、昔から家族ぐるみで付き合いのある、いわゆる幼馴染みの間柄だった。

　私の父はアメリカの大手総合広告代理店「ビッグ・チーズ・ワールドワイド」の日本法人として設立された外資系広告代理店の代表を務めている。

　ちなみに『big cheese』は“大きなチーズ”ではなく“大物”という意味らしい。

　父の会社の顧問弁護士を務めているのが稀一くんのお父さんで、父とはアメリカの留学時代に知り合って仲良くなったんだとか。

　外資系企業は国外との契約や取り引きなども多いので必然的に諸外国との実務を扱える弁護士が顧問になる場合が多い。いわば国際弁護士と呼ばれる。

　稀一君のお父さんはもちろん、稀一くん自身もアメリカに留学し、日本とアメリカでそれぞれ弁護士資格を持っている。

　彼のお父さんは大手弁護士事務所のパートナー弁護士として勤務していて、稀一くんも同じ事務所に所属し、諸外国との企業との契約交渉などをメイン業務として行っているんだとか。

　稀一くんのお父さんは業界ではそれなりに名の知れた弁護士で、彼のお母さんは一族で大手有名企業を経営しているので稀一くんの品のある雰囲気は家庭環境も大いに影響しているのだと思う。

　対する私は、自分でいうのもなんだけれど社長令嬢といった雰囲気はほとんどない。優雅さというか、上品さというか。

　それなりに裕福な暮らしはしていたかもしれないが父も母も贅沢をする人ではなかったし、なにより両親共に忙しかった。

　会社を支えてくれる社員や顧客、取引先を大事にする両親を私は誇りに思っている。
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