エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
「いつも私を優先して大事にしてくれてありがとう。私、幸せだよ。でもね、それよりも私は稀一くんの本当の気持ちが知りたくて、稀一くんの気持ちがずっと欲しかったの」

 言わないんじゃなくて言えなかったんだ。稀一くんは言葉の重みを知っている人だから、きっと私が想像する以上に私のことをたくさん考えてくれていたんだと思う。

 けれど――。

 私は彼をまっすぐに見据えた。

「大切にされるばかりじゃなくて、これからは私も稀一くんを支えられるように頑張る。だから、ずっとそばにいて愛してください」

 最後は涙で視界が滲む。稀一くんは私の頬を撫でて優しく笑った。

「愛してる。誰よりも日奈乃を愛しているんだ。生涯かけて守っていくと誓うから、これからも俺の隣にいてほしい」

 こくりと首を縦に振るのが精一杯だった。さっきとは違う意味の涙がこぼれ落ちていく。

 私は笑顔を作り、右手をお腹に当てた。

「この子も?」

「もちろん」

 迷いなく答えられ心が満たされる。不意に視線が交わり、ごく自然に目を閉じると唇に温もりを感じた。

 片思いしていた相手と交際ゼロ日で結婚を決めて、幸せそのものの新婚生活に疑問を抱いたときに妊娠が発覚した。

 そして今、お互いの本音をぶつけあってやっと私たちは本物の夫婦になれた。

 順番がめちゃくちゃだ。でも私たちには必要な回り道だったのかもしれない。
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