ボトルメール
せっかく親に大学のお金を出してもらっているのにさすがに無駄には出来ない。
そんなことを考えていると、一階から父が俺を呼ぶ声が聞こえた。
俺は返事をして一階へ行くと父と母がテーブルに缶ビールを三本置いて、いつもの椅子に座っていた。
「いつかはこうして自分の子供と飲みたかったのよね〜」
俺が席に着くと母は口を開いた。
「もしかして酔ってる?」
「そうなんだよ。俺は風呂から出るまで待っててって言ったのに既に飲んでんだよ。そして、これは二本目」
父さんはその二本目の缶ビールを指さして笑いながら俺にそう言った。
「とりあえず乾杯しよっか」
俺はお酒は初めて飲む。初めて飲むお酒が家族とだなんて随分と親孝行してると思う。
『カンパーイ』
俺と母さんと父さんは口を揃えてそう言って、缶ビールをぶつけあった。
そして初めて流し込んだビールはとても苦く、慣れるのに時間がかかるものだった。
「父さん…俺スポーツトレーナーになりたい」
お酒を飲み始めて酔いが回ってきた頃、俺はふとそう言っていた。
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