相思相愛マリアージュ(後)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
外来診察を終えた診察室を借りて、超音波装置で俺達の子を見た。

ほとんど残っていない羊水の中で小さなカラダを縮こませ、ジッとしている我が子を見ていると辛かった。

「苦しいよね…」

遥も同じ思いを抱いていた。

「・・・苦しいよ…だから、俺は早急に親として…この子を楽にしてあげたい…俺の言ってるコト…わかるよな…遥」
俺はオブラートに言葉を包み、遥の説得を試みた。

「奏弥…さん」

「俺が中絶手術をする…君だけに罪の意識は抱かせない…」

罪の重さも同じ。
遥だけに辛い思いはさせない。

「・・・私…貴方にこんな辛い思いさせる為に妊娠したワケじゃない…奏弥さんに赤ちゃんを・・・自分の子を抱かせてあげたかっただけなのに・・・」

「・・・かりそめでもパパになれた・・・この二ヵ月間は幸せな気分味わえたよ…遥」

「奏弥…さん!?」

俺はドップラーで心音を訊き、二人で涙に暮れた。

ほんの束の間の三人家族。

人様の子の死をずっと見て来たけど、何処か空言だった。
死にゆく我が子を見つめ、命の尊さを改めて理解した。




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