天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
だから、兄は強行手段に出たのだろう。
もう病院に来るなと言ったのに。
しかも、診察室の前にいるということは、樹に会って話をするつもりなのだ。
「香織さん、ちょっと様子見てきます」
席を立って診察室に向かうと、香織さんが言うように兄が椅子に腰掛けてスマホで話をしていた。
「ああ。そうだ。あそことの取引は切れ。じゃあ、頼んだぞ」
なにやら部下に指示を出しているようだが、診察室の前で電話なんて非常識すぎる。
通話を終わらせてスマホをポケットにしまう兄を腕を組んで睨みつけた。
「片岡さん、通話はご遠慮ください」
故意に兄を名字で呼んで厳しく注意するが、兄は反省した様子もなく私に言い返した。
「部下から至急でかかってきたんだ。そんなことより、なぜ俺の電話に出ない?」
すぐに話題を変えて自分の非を認めない兄にカチンとくる。
「出たところでお兄ちゃんと会話になんかならないからです。もう来ないでって言ったのになんで来たの?しかも、氷室先生に会うつもりなんでしょう?」
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