天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「お前が電話に出ないなら氷室に話をした方が早いと思ってな」
どうやら兄は戦術を変えたらしい。
「お兄ちゃん、氷室先生は暇じゃないの。帰って自分の仕事をしたらどうなのよ」
私に構ってる暇があるなら、もっと仕事をしろと言いたい。
「お前が氷室と別れるならそうしよう。あいつは氷室製薬の御曹司だぞ。きっと女がわんさかいる」
その変な偏見、自分にも当てはまっているよね。
「はいはい。わんさかね。じゃあ、片岡製薬の御曹司のお兄ちゃんにも女がわんさかいるのね。わかったわ。話は聞いたから帰って」
軽く聞き流す私の反応が意外だったのか、兄は戸惑った顔をする。
「お前、あいつが氷室製薬の御曹司って聞いて驚かないのか?」
樹を御曹司として見たことはない。
私の中ではずっと先生だから。
それに自分の身内が御曹司なのだから珍しくもなんともない。
「驚く必要ある?お兄ちゃんは片岡製薬の御曹司じゃない。それに、氷室先生は脳神経外科医よ。御曹司とか私にはどうでもいい」
「どうでもよくない。そのうちあいつの婚約者とかが現れるぞ」
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