天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
なぜそんな返答をしてしまったのか自分でもわからない。
「わかった」
田辺さんは満足そうに頷いて、自販機でカップのコーヒーを買うと私に手渡した。
「どうぞ」
「ありがとう」
礼を言って田辺さんと一緒にソファに座る。
ど、どうしよう。
今、樹は大学病院に行っていていない。
誰か人がいるところに戻りたいが、彼の目を見てしまうと、金縛りにあったかのように身体が動かなくなる。
「僕、あなたからの電話を待っていたんですよ」
穏やかな声なのに背筋がゾクゾクする。
「……すみません」
呟くように謝るが、彼の沈黙に耐えられず、もらったコーヒーを何度も口に運ぶ。
「ここの病院の人に聞きましたが、氷室先生とお付き合いされているそうですね」
樹の話が出てきて、もう彼の顔をまともに見られなかった。
結婚話を持ちかけられたのだから、にこやかに樹のことを話すことなどできない。
「……はい」
必要最小限の返答をしてこの話題を終わらせようとするも、田辺さんは樹のことを褒め称えた。
「氷室先生は若いのに世界的な名医で評判もいい。よかったですね」
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